2026/09/17
【定期連載】都市緑化と防災③ ~古の言葉と豪雨対策~
屋上・壁面緑化
2026年8月13日、関東では線状降水帯が発生し、千葉県では記録的な大雨となった。都市部では内水氾濫となり、SNSで届く動画では道路は河川のようになり、車は至る所で動けなくなっていた。住宅への浸水や鉄道、停電への影響に加え、人的被害も報じられるなど、大きな被害となった。
同じ頃、自分も神奈川で同じ豪雨に遭遇したが、傘も持たずに出かけていたため、体が濡れたというよりも、バケツの水を頭から被ったようだった。道路は瞬く間に冠水し、毎年同じようなことを経験するようになり慌てなくなったが、千葉のニュースを後ほど聞いて被害の大きさに驚いた。
被害に遭われた方々には、心からお見舞い申し上げたい。
豪雨と古の言葉
このようなゲリラ雷雨は、近年になって初めて起きた出来事ではないのかもしれない。調べてみると、奈良時代の歴史書「続日本紀」に「驟雨(しゅうう)」という言葉が出てくる。驟雨の驟とは、「馬が急ぐ」という意味を持つ言葉だそうで、馬が一気に駆けるような速さの雨を表現し、急に降り出す激しい雨を指すとされている。現代のゲリラ豪雨を思わせるような、局地的で激しい雨の表現とも言えるだろう。
この続日本紀には「京中に驟雨あり。水潦(すいろう)、汎溢(はんいつ)す。また伎人・茨田等の堤、往々決壊す。」天平勝宝2年5月24日(西暦750年)とある。水潦とは、大雨により地上に溜まった水、汎溢とは、水が溢れ広がる様をいう。当時の都でも、激しい雨により大地が水で溢れ、伎人・茨田等の堤が決壊し、大きな被害があったようだ。現代の内水氾濫とまったく同じものとは言い切れないが、古き奈良時代から都は雨による水害に悩まされていたことがうかがえる。
他にも雨に関する古の言葉がある。「白雨(はくう)」「村雨(むらさめ)」「繁雨(しげあめ)」「篠突く雨」などだ。白雨は、白く見えるほどの激しい夕立。村雨は、ひとしきり強く降ってすぐ止む雨。繁雨は、絶え間なく降る雨。篠突く雨は、細い篠竹を束ねて突き下ろすように真っすぐ激しく降る雨を表す。
このように、昔の人は雨をただ恐れていたというよりも、様々な雨の特徴を言葉に表現し、雨に名前を与えるほど身近に観察していたのではないだろうか。自然の営みを受け入れ、観察し、氾濫と付き合いながら、治水を積み重ねてきたことは想像に難くない。
では、現代の私たちは雨とどのように付き合えばよいのだろうか。これまで都市の雨水対策は、降った雨を側溝や下水道に集め、できるだけ速やかに河川へ流すことを基本としてきた。しかし、短時間に猛烈な雨が降れば、下水道の排水能力を超え、行き場を失った雨水は道路へと溢れ出す。これが都市で頻発する内水氾濫である。ならば、雨を「すぐに流す」のではなく、降った場所でいったん受け止め、貯め、ゆっくり流すことはできないだろうか。
屋上という小さなダム
山では森林が雨を受け止める。農村では田んぼが雨を貯める。公園や緑地では土が雨を浸透させる。そして建物が密集する都市には、まだ使える場所が残されている。「屋上」だ。

「雨水流出抑制」と「緑地面積の確保」の二つの法規制を同時にクリア
その屋上を活用し、雨水流出抑制と緑化の二つの役割を担うのが、当社の「スクエアターフ洪水無用」である。都市のさまざまな建物の屋上で採用され、雨水をため、ゆっくり流す仕組みづくりに活用されている。屋上緑化というと、植物を植え、景観を良くし、ヒートアイランド現象を緩和するものという印象が強い。しかし「スクエアターフ洪水無用」が目指しているのはそれだけではない。屋上に降った雨をその場で受け止め、一時的に貯留し、下水道へ一気に流れ込むことを抑える。言ってみれば、都市の建物の上につくる「小さなダム」である。
一つの屋上が受け止められる雨量には限りがある。しかし、学校、庁舎、オフィス、病院、工場、物流施設、商業施設、マンション......。都市に無数に存在する屋上が、それぞれ少しずつ雨を受け止めたらどうだろうか。一滴の雨を一か所に集めれば洪水になる。しかし、その一滴を降った場所で少しずつ受け止めることができれば、少しでも水害を軽減する力になる。これは、現在進められている「流域治水」の考え方にも通じる。

■屋上に設置された雨水流出抑制型屋上緑化システム『スクエアターフ洪水無用』
川だけに治水を任せるのではない。巨大な地下空間に雨水を貯める施設に委ねるのでもない。森林が受け止め、田んぼが貯め、公園や雨庭が浸透させ、そして都市では建物の屋上も雨を受け止める。流域に暮らす私たち一人ひとりが、少しずつ水を引き受けるのである。先人の知恵とこれからの治水
白雨、村雨、繁雨、篠突く雨――。
先人たちは雨の表情を細やかに見つめ、名前を与え、水の恵みを受けながら、その脅威とも折り合いをつけて暮らしてきた。気候が変わり、都市が変わった今、私たちもまた、新しい雨との付き合い方を考える時に来ているのではないだろうか。
執筆/文責
共同カイテック株式会社 環境事業部
川口 政義












