2024/12/24
『最新緑化事情』を考える
屋上・壁面緑化
『最新緑化事情セミナー報告』
1.『都市環境研究会』の設立
『都市環境研究会』は、緑化資材メーカー、ランドスケープ設計者、建築設計者、生産者など都市環境の最先端で活躍する専門家が集まり、現場での問題や課題点を議論しようとするもので、当日、共同カイテックを事務局とし設立されました。
2.緑化セミナー報告
①屋上緑化の失敗事例と最新緑化事情PART2
共同カイテック(株)川口社員から屋上緑化の失敗事例を中心に昨今の最新事情が報告されました。屋上緑化システムの飛散事例については、数例の緑化システム飛散写真と共に、その危険性と性能担保について報告がされました。また、屋上緑化の枯れについて原因と対策がまとめられ、設計上の注意点などが提案されました。特に設計現場の声として、カーボンポジティブ、グリーンインフラ、生物多様性は屋上緑化システムにおいて取り入れるべき時代要請であると報告されました。
②広がり始めた地域性種苗を用いた緑化
エスペックミック(株)からは、講師の山口勉特任部長が、『里山の風景写真から感じるものは何か』と参加者への問いかけから始まりました。そこから世界の生物多様性の潮流及び地域の特性を踏まえたエスペック社の取り組みなどが紹介され、地域性種苗については在来種を用いた緑化の事例が報告されました。最後に2020年ネイチャー誌に掲載された『陸上生物多様性の未来予測シナリオ』を提示し、参加者に私たちは何ができるのかと再度問いかけがなされました。
③壁面緑化の最前線の取り組みとこれからの壁面緑化
(株)グリーニアン岡田社長からは、壁面緑化の変遷を第一世代、第二世代と体系化し、それぞれの課題や失敗事例を写真と共に分析がされました。また、グリーニアン施工における実例写真やメンテナンスの方法による不具合事例なども報告、さらに、海外の壁面緑化事例については採用植物、緑化システムと共に失敗事例、先進事例が紹介されました。
④ 世界の都市で進むアーバンフォレスト戦略
(株)野上緑化野上社長からは、アーバンフォレストに関する各界の取り組みと樹木の恩恵の可視化、数値化についての紹介がされました。また、メルボルンや欧州、ポートランド、台北、ホーチミンなど各都市の先進事例紹介がされました。日本においては管理の問題で居心地の悪い空間から、仙台市定禅寺通りなどの事例から緑がどれだけ貢献しているのか、またエリアマネジメントなどにより既存樹の保護やその範囲を広げることでアーバンフォレストを一般化させることができるのではないかなど提案がされました。
3.まとめ
以上のように、いずれのセミナーも各現場における生の声が届けられ、参加者に様々な課題と提案がされました。特に管理を含めた現場の不具合、失敗事例は、今後の設計や施工において認識を新たにすることができたのではないかと思います。また、カーボンポジティブ、生物多様性、アーバンフォレストは時代の要請と共に『私達は何が出来るのか』というエスペックミック山口部長の言葉の問いかけに、各自がそれぞれの分野で貢献していこうと決意を新たにすることができました。 『都市環境研究会』は今後も『現場』をキーワードに都市環境の課題や問題点に広く議論を深めていきたいと考えています。